検査結果の見方

* 糖尿病

検査結果が悪いからといって必ずしも病気が潜んでいるとは限りません。精密検査の指示のある方は必ず医療機関にご相談ください。
また、検査項目は関連性がありますので単独の検査項目だけでなく、他の検査結果と合わせてご覧ください。

検査からわかること

血糖は生きていくための大切なエネルギー源です。

私たちの体の臓器や筋肉はたくさんの細胞でできていて、その一つ一つの細胞には、常に糖と酸素が必要です。
糖が血液中にどの位あるかをみたのが以下の検査です。

検査項目 基準値 評価の仕方
血糖(GLU) 空腹時
60〜99㎎/㎗
糖は食事によって一時的に血液中に増えますが、インスリンの働きでいったん肝臓や筋肉、脂肪細胞の倉庫へしまわれるため、常に一定量(正常範囲)が保たれます。血液中の糖が、熱や力などの体を動かすもと(エネルギー源)として使われると、倉庫の中の血糖が使われるしくみになっています。
HbA1c
(ヘモグロビンエーワンシー)
NGSP
~5.5%
過去1〜2ヶ月の血糖の平均値をみます。ヘモグロビンとは、赤血球にある血色素で、体内(各臓器)に酸素を運ぶ役割をしている蛋白質のことをいいます。HbA1cは、血糖が蛋白質とくっつく特性を活かして、糖がくっついて働きの悪くなったヘモグロビンの割合をみたものです。基準より高い場合は、血糖が高くなっていることが推測できます。検査時の食事の影響を受けずに評価ができます。
尿糖 (―) 血糖は大切なものなので、腎臓でせきとめて尿からは出ないしくみになっています。しかし血糖値が160〜180mg/dℓ以上になると、腎臓からあふれて尿糖として出るといわれます。食後に検査すると血糖が高くなり尿糖がでることもあります。空腹時や食後に関係なく、尿糖が出ている場合は血液検査で詳しくみていくことが大切です。
また、空腹時に血糖及びHbA1c検査を実施して正常値であるにも関わらず尿糖が出る場合があります。腎臓の血糖を貯められる量には個人差があり、定量が決まっています。コップの大きさでイメージすると、コップの大きい人もいれば、小さい人もいるということです。コップが小さいと血糖が160mg/dℓ未満でも尿糖が出る(腎性糖尿)場合があります。これは糖尿病とは違います。

血糖が高いと全身に影響が及びます。

体に必要な糖ですが、血糖が高いと血液中の蛋白質(例えば酸素を運ぶヘモグロビン(血色素)や、細胞の材料であるコレステロール、細菌やウイルスを退治する白血球など)とくっついて、本来の働きを悪くしてしまいます。これが全身の老化を進め、特に血管が老化(動脈硬化)すると心筋梗塞につながりやすいといわれています。
高血糖のダメージをうけやすいのは『目(網膜)・神経・腎臓』で、糖尿病特有の3大合併症といわれます。悪化すると、失明や手足が腐って切断したり、腎不全で人工透析をするなど、ふだんの生活の維持さえ困難な事態を招くことがあります。

血糖の高くなる原因は「インスリン」です。

インスリンは膵臓で作られているホルモンで、血糖を一定に調整しています。インスリンはあるけれどその効きが悪くなることや、インスリンが不足することで、血液中に糖があふれてしまい血糖が高くなります。
インスリンの効き方・出方は糖負荷試験でわかります。

<検査方法>

糖負荷試験
(75gOGTT)
75gのブドウ糖を含んだ糖飲料を飲み、一食の食事をした時と同じ状態の血糖値とインスリン(血糖を一定に調整するホルモン)の変化をみます。空腹時と糖飲料を飲んだあと30分後、1時間後、2時間後に採血をし、血糖値に対してインスリンの分泌される反応やインスリンの 量や効きの状態を調べます。
糖負荷試験からわかること 各項目の特徴
I.I
(アイアイ)
インスリンの血糖に対する反応の速さをみます。

I.I 計算式

基準値:0.4以上

血糖の上昇に合わせてインスリンが出る状態をみます。
0.4未満の場合はこの分泌の反応が遅く、食後の血糖の上昇に対して、血糖が十分に下げられないため、食後血糖の異常につながります。
遺伝的に反応の遅い膵臓の体質を受け継いでいる方もいますが、遺伝だけでは糖尿病にまではならないといわれています。
HOMA
(ホーマ)
インスリンの効きの状態をみます。

HOMA計算式

基準値:1.6以下
※空腹時血糖が正常範囲の場合のみ当てはまる検査です。

空腹時の血糖値を、どのくらいのインスリンを使って調節しているかがわかります。この数値が高いほどインスリンの効きが悪いことを意味します。
インスリンの効きが悪いと、インスリンをたくさん出して血糖の調節をしなければなりません。インスリンが血液中に多い状態は血管を傷めて動脈硬化を進めてしまいます。また、過剰にインスリンを出し続けると膵臓の働きが弱くなり、インスリンが不足して血糖の調整ができず糖尿病につながります。

糖尿病は血糖が高い状態をいいます。健診で実施する空腹時血糖検査において異常値の場合は、既にインスリンの働きが低下した状態であり回復は困難といわれます。
糖尿病の遺伝や肥満など気になる方は、上記の検査をすることで糖尿病になる以前の状態がわかるため、ぜひお勧めします。

糖尿病にならないための工夫は?

◉減量することでインスリンの効きが良くなります。
特に内臓脂肪が過剰にたまることで脂肪細胞からインスリンの効きを邪魔するホルモンが多く出されているといわれます。
インスリンの効きを良くして高血糖や糖尿病を改善するための減量目標は、標準体重でなくても、現在の体重の5〜10%減らすことで効果が期待できます。
◉血糖は食事からとる糖分の影響を強く受けます。
ご飯や麺類などには糖分が含まれています。特に吸収の速い糖分である砂糖や果糖を多く含むジュースやお菓子、果物などはインスリンが 一度にたくさん必要となるため、膵臓の負担を増やしてしまいます。 砂糖・果糖を多く含む食べ物は控えましょう。
◉食物繊維を多くとりましょう。
食物繊維には、食べ物の糖の吸収をゆっくりにする働きがあります。糖の吸収が遅れることで、一度にたくさんのインスリンが必要でなく、膵臓の負担が減ります。
◉運動をすることで糖を効果的に消費します。
運動や日常活動動作が活発な場合は、筋肉で糖を取り込むのに必要な物質が増加します。この物質が多いと インスリンに負担をかけずに筋肉でたくさんの糖が消費されます。

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